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平成31年4月施行の土壌汚染対策法改正について

1.はじめに

 土壌汚染対策法(以下、「法」という)は、土壌汚染対策の実施 を図り国民の健康を保護することを目的に施行されました。 土壌汚染は主に私有財産の土地の汚染であるため、訴訟や売 買などの取引にかかわるという他の環境関連法令と異なる一 面を持ちます。

2.改正のポイント① (土壌汚染状況調査の実施対象となる土地の拡大)  

 土壌汚染の有無を確認するための調査(土壌汚染状況調査) は、表1に示す3つの契機があります。1つ目は特定有害物質を使用等※1 している水質汚濁防止法に規定される特定施設の廃止(法第3条)。2つ目は3,000㎡以上の土地の形質変更 (法第4条)。3つ目は土壌汚染により、人の健康被害のおそれがある場合(法第5条)です。特定施設の廃止を契機とする土壌汚染状況調査は猶予規定があり、廃止後も引き続き工場・事業場などの敷地として利用する場合、調査を猶予できます。そして、当該土地の利用方法の変更届出後に、人の健康に係る被害のおそれがあると都道 府県知事が認めた場合調査を実施します。改正第二段階施行後はその利用方法変更に加え、軽易な行為を除く土地の形質変更時も届出を行い、必要に応じて調査を実施することになりました。そのため、現在猶予中の土地を所有する事業所は、 土地の形質変更の際注意が必要です。6 7 法が平成15年に施行されてから15年が経過しました。平成 28年の改正により平成29年4月からクロロエチレンが特定 有害物質に追加され、平成30年4月に平成29年改正の第一段階が施行されました。そしてその後第二段階が平成31年4月1 日に施行されることが決まりました。今回は第二段階の改正に ついて特に注意の必要と思われるポイントを解説します。

土壌汚染状況調査の契機
表1 土壌汚染状況調査の契機

3.改正のポイント② (汚染の除去等の措置内容に関する計画提出命令の創設等)

 土壌汚染状況調査及び詳細調査から汚染の範囲が確定されると、汚染が拡散しないように汚染除去等の措置が必要となります。従来提出義務がありませんが、汚染除去等の措置内容に関する計画の提出が改正第二段階施行後義務となりました。 提出した計画に変更命令が出た場合、命令に従い計画を変更します。また、計画に従った汚染土壌の除去等の措置を実施後、措置完了報告書の提出が必要です。愛知県及び名古屋市では既に条例によりこれらの計画や完了報告書の提出が必要となっています。ただし記載内容など詳細は、改正法の施行内容と異なる可能性があるため、注意が必要です。

手続き比較
図1

4.改正のポイント③(リスクに応じた規制の合理化Ⅰ)

 改正前の法では、土壌汚染状況調査を実施し汚染が確認されて形質変更時届出区域の指定を受けた場合、形質変更時に事前の届出が必要でした。一方臨海部などの工業専用地域は、地下水の飲用や土壌の直接摂取の可能性がないため、その他の形質変更時届出区域と比較して健康リスクが低いと考えられます。そのため、予め 都道府県知事の確認を受けた土地の形質変更の施行及び管理 の方針に基づく行為であれば、改正第二段階施行後は工事毎の事前届出に代えて年一回程度の事後届出でよいことになりました。ただし、汚染原因が専ら自然由来又は埋立材由来であること及び臨海部※2 の人の健康に係る被害が生じないこと、生じるおそれがないことが条件です。該当の形質変更時届出 区域では形質変更による事務負担の軽減が期待されます。

形質変更時用届出区域
図2

5.改正のポイント④ (リスクに応じた規制の合理化Ⅱ)

 平成29年10月31日現在1,872区域※3がある形質変更時届出区域には145区域3の自然由来特例区域があります。自然由来の汚染は砒素やふっ素、鉛等の有害物質をもともと多く含む、人為的な汚染でない土壌汚染をいいます。現在この特例区域から汚染土壌を搬出する場合、許可を受けた汚染土壌処理施設で無害化する必要があります。しかし改正第二段階施行後は自然由来の汚染土壌を搬出する場合、届出を行った後、汚染の拡散のおそれのないことの確認を受けた上で、無害化することなく同一地層の自然由来等による土壌汚染のあるほかの指定区域への移動が可能となります。

自然由来など形質変更時要届出区域
図3

6.まとめ  

 平成31年4月1日の改正は、ポイント①~④以外にも予定されています。例えば、第一種特定有害物質のシス-1,2-ジクロロエチレンがトランス体と合わせた-1,2-ジクロロエチンとして規制されることなどが挙げられます。今後の改正情報にも継続して注意が必要です。 また、土壌汚染状況調査は、特定有害物質をはじめ土壌汚染 調査の契機や調査方法など複雑な内容のため、専門知識が必要です。当社は平成15年から土壌汚染調査の指定調査機関として土壌環境の改善に積極的に取り組んでまいりました。土地の取引にかかわる自主調査や法に係る調査そして土地の形質変更時の際ご不明な点がありましたらご相談ください。

※1 愛知県の場合、県条例により特定有害物質の使用有無によらず、特定施設廃止が土壌汚染状況調査の契機となります。
※2 省令等で規定の予定。
※3 環境省主催「平成29年度改正土壌汚染対策法説明会」配付資料から

参考文献

1)平成29年度改正土壌汚染対策法説明会.名古屋市, 平成30年2月21日, 環境省
2)県民の生活環境の保全等に関する条例, 平成15年3月25日,条例第7号, 愛知県
3)市民の健康と安全を確保する環境の保全に関する条例,平成15年3月25日,条例第15号, 名古屋市
Author 川口 真央Kawaguchi Masahiro
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