ユニケミーについて TOP

EPMAとSEMの違い

unichemy_epma_lab

 当社は表面分析などに用いるEPMA(電子プローブマイクロアナライザー)と FE-EPMA (FE:電界放出型/フィールドエミッション)を既に備えており、更に今年度FE-SEM (SEM:走査電子顕微鏡)及びFE-EPMAを導入した。 それらの装置の性能や違いを説明したい。本稿が表面分析に興味をもたれる方の参考になれば幸いである。

(注) 本稿中のFE電子銃は、特に記す場合を除き「ショットキー電子銃」をいい、SEMは「SEM-EDX」をいう。

1.はじめに  

 愛知県は自動車や航空機他の製造業者が多く「ものづくり王国」と言われる。

 愛知県のホームページによると製造業の従業員数が82万人で全都道府県の第一位、製造品出荷額等が 46兆円で39年連続第一位、事業所数も凡そ1万8千社あり第 2位となって、偽りなく愛知県は日本一の実力を持つ。

 その愛知県を事業拠点とする分析機関である当社も、微力ながらこの実力を支えたいと願っており、理化学分析を通して支援し、お役に立てればと願っている。

2.表面分析に用いる装置  

 ものづくりは、製品開発研究における、製品の性能や品質、 原資材の品質、環境などの問題があり、その原因究明や対策対応の相談をいただくことが多い。ものづくりの原因究明や対策対応の相談のうち、多くを占めるのは製品や原材料の品質に関連する課題であろう 。その分析や調査に用いる手法の一つが表面分析である。表面分析の機器にEPMAとSEMそしてX線光電子分光法(XPS)やオージェ電子分光法(AES)などがある。なかでもEPMAとSEMは、使いやすさに優れるため近年多くの分野で広く活躍するようになった。

FE-EPMA、JXA8530Fplus
図1-1  今回導入したFE-EPMA (JXA-8530FPlus )
FE-SEM、JSM-7200F

図1-2   FE-SEM (JSM-7200F )の装置外観

3.仕組み

(1)波長分散分光法(WDX)  

 EPMAの元素分析は、波長分散分光法(WDX)を用いる。 WDXは、試料表面から発する特性X線を分光結晶で回折し、検出器へ導入する仕組みである(図.2)。特性X線の波長と原子番号の関係から、試料中に存在する元素を確認し元素分析 を行う。WDXの核となる原理は、1910年代に相次いで発見され た。しかしEPMAが現在とほぼ変わらない構成となったのは 1950年頃である。

波長分散分光法(WDX)のイメージ
図2  波長分散分光法(WDX)のイメージ

(2)エネルギー分散分光法(EDX)  

 SEMの元素分析は、エネルギー分散分光法(EDX)を用いる。EDXは、試料表面から発する特性X線を素子でパルス信号に変換し、信号のエネルギーと回数を測定することで元素分析を行う。従来、素子の冷却には液体窒素を用いていたが、近年、ペルチェ素子を用いた構造に置き換わり、利便性が向上した。1969年に初めて装置に組み込まれたEDXのエネルギー分解能は約300eVであったが、現在約130eVまで向上している。

3.2. FE電子銃

 いずれの装置も、試料表面に電子ビームを照射し、得られた信号から像を形成している。この電子ビームの発生源を電子銃と呼ぶ。電子銃の中でもFE電子銃は、従来のタングステンヘアピン型より1000倍以上高い輝度の電子ビームが得られるため、FE電子銃を搭載したEPMAやSEMは、極表面分析及び微小領域分析に広く用いられている。 代表的なFE電子銃として、低加速領域において高分解能の 像が得られるCFE(冷陰極電界放出:コールドフィールドエミッション)電子銃と、より電流安定度に優れたSE(ショットキー:ショットキーエミッション)電子銃があるが、いずれの電子銃も一般的な総称として「FE電子銃」の表記が用いられる。1970年代後半に開発されたSE電子銃は、タングステン単結晶に酸化ジルコニウムを塗布したものを電子源としており、約1800Kまで加熱する必要があるが、CFE電子銃ほどの真空度を必要としないため、装置が比較的安価である。

この電子ビームの発生源を電子銃と呼ぶ。電子銃の中でもFE電子銃は、従来のタングステンヘアピン型より1000倍以上高い輝度の電子ビームが得られるため、FE電子銃を搭載したEPMAやSEMは、極表面分析及び微小領域分析に広く用いられている。 代表的なFE電子銃として、低加速領域において高分解能の 像が得られるCFE(冷陰極電界放出:コールドフィールドエミッション)電子銃と、より電流安定度に優れたSE(ショットキー:ショットキーエミッション)電子銃があるが、いずれの電子銃も一般的な総称として「FE電子銃」の表記が用いられる。1970年代後半に開発されたSE電子銃は、タングステン単 結晶に酸化ジルコニウムを塗布したものを電子源としており、約1800Kまで加熱する必要があるが、CFE電子銃ほどの真空度を必要としないため、装置が比較的安価である。

4.特徴

4.1. 検出限界とエネルギー分解能

 SEM(EDX)の元素分析は、「全元素を一度に分析できるため、EPMA(WDX)より分析時間が短い(EPMA:~10分、SEM::約1分)」 のをご存知の方も少なくないと思われる。では、微量元素の検出限界やエネルギー分解能について、どの程度の違いがあるかご存知だろうか。

(1) 検出限界  

 実は、EPMAの定性分析条件(100nA、5分)に対し、SEMの分析条件(電流は検出限界が最良になるように設定、5分)を合わせた場合、検出限界はどちらも約0.1%となる。しかし一般的には、SEMに比べEPMAは概ね2桁低い濃度を検出できると言われている。(表.1)その理由の一つは、分析時間の差であり、もう一つは電子ビームの電流量の差にある。 定性分析に要する測定時間は、通常、SEMは測定時間が約1分であるのに対し、EPMAは5分程度とされる。いずれの装置も分析時間を延ばすことで、更に検出限界を下げられる。また、特性X線の強度は電子ビームの電流量に比例するため、その電流が大きければ微量成分を感度良く検出できる。EPMAは、電子ビームの電流量を1000nA以上とし、更に分 析時間を延ばした場合に限り、EDXの通常の測定条件に比べ、 2桁低い検出限界を実現できる。

EDX と WDX の比較 ( 定性分析時 )
表1 EDX と WDX の比較 ( 定性分析時 )

(2) エネルギー分解能  

 図.3は、エネルギー分解能の視点から比較した両装置のスペクトルを示す。 いずれも二硫化モリブデンのスペクトルであるが、EDXは Mo(モリブデン)とS(硫黄)のピークが分離できていない。一方、特性X線の「波長」により信号を分光するWDXは、それぞれのシャープなピークが得られ明瞭に識別できるため、定量分析も充分に可能である。但しWDXもピークが重畳し、分離しきれない場合もある。状況に応じて特定範囲のパルスのみを検出するフィルター(PHA)を併用し妨害成分を除去する。エネルギー分解能は、現状WDXに軍配が上がるが、近い将来この構図が大きく変わるかもしれない。というのも従来のシリコンドリフト型(SSD)に変わるマイクロカロリメータ型 のEDXが報告されており、そのエネルギー分解能はWDXと 同等かそれ以上の約5.0eVである。但し、センサ素子を 0.06Kにまで冷却しなければならず 、一般の分析装置に普及するまで時間がかかるとされる。なお装置はX線天文衛星「すざく」に搭載された。

 二硫化モリブデンのEDXとWDXでのスペクトル
図3  二硫化モリブデンのEDXとWDXでのスペクトル

4.2. 表面構造観察

 同じFE電子銃を備えたFE-EPMAとFE-SEMで観察したパーライト組織を図.4に示す。 FE-SEMは、高空間分解能を目的としたレンズ構成となっており、低加速電圧領域かつ高倍率では、FE-EPMAで得られる 電子像と比べ高精細な像となる。 加えて、試料表面の微細構造を捉えるため、リターディング機能やジェントルビーム(GB)モードと称する方法を用い、高エネルギーを持った電子線を試料直前の電界で減速させることに より、1kV以下の極低加速電圧でも高解像度の像を得られる。

FE-EPMA と FE-SEM の二次電子像 (5kv、50,000 倍 ) 比較
図 4  FE-EPMA と FE-SEM の二次電子像 (5kv、50,000 倍 ) 比較

5.まとめ

 EPMAは、検出器のエネルギー分解能が10倍以上優れるため、現状のSEM-EDXが難しい0.1wt%程度の偏在する微量成分の定量分析などに用いられる。微構造観察でもFEタイプ であれば、数万倍の像観察も可能である。一方、FE-SEMは、本来微細構造観察に特化した装置であるため、FE-EPMAが難しい10万倍を超える高倍率の高精細な電子像を得られる。従ってサブミクロンオーダーの極微粒子の形態観察や極表面の微細構造観察などに有用である。 EPMAとSEMは系譜が異なり、別々の装置として発展してきた。しかし機能が高度化するにつれて装置の機能や得られる結果に大きな差がなくなってきたと言える。しかしながら、 それぞれの装置の特徴を理解し、目的に応じた装置を選択すればより精度の高いデータが得られる。

参考文献

1. 木ノ内嗣郎. EPMA電子プローブ・マイクロアナライザー. 技術書院, 2001, 346p.
2. 原田嘉晏,富田正弘. 日本の電子顕微鏡技術の発展. 顕微鏡. 2011, 46(3), p.3-47. 日本表面科学会編.電子プローブマイクロアナライザー. 丸善, 1998, 221p.,(表面分析技術選書)
3. 真下 正夫,小島 勇夫,土井 清三. 表面分析図鑑. 共立出版, 184p.
4. 副島 啓義. 電子線マイクロアナリシス―走査電子顕微鏡、X線マイクロアナライザ分析法―. 日刊工業新聞社, 1987, 597p. 参考文献
5. 高橋 昌弘,国田 肇. 高分解能SEMの有効利用. CREATIVE. 2007, (8), p.41-49.
6. 佐藤亜弥子ほか. EPMA(WDS)の検出限界に基づく微量元素分析条件の検討. 日本電子ニュース. 2017, 39, p.24-29.
7. 藤本 龍一. “読むISAS:X線天文衛星「すざく」”. X線マイクロカロリメータ X線天文学の未来を切り開く分光技術の最前線.
8. 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所. http://www.isas.jaxa.jp/j/special/2008/suzaku/21.shtml, (参照 2018-05-31).
Author 大森 邦弘Oomori Kunihiro
Please enter message

記事の内容や分析に関して疑問や質問があればどんなことでもお気軽にお声掛けください。
あなたの口コミをお待ちしております。

は必須項目ですので、必ずご入力ください。

下記リンク先のプライバシーポリシーをお読みいただき、ご同意の上お問い合わせをお願いいたします。

RANKING 人気事例ランキング

TAG LIST

油分赤外分光光度計赤外分光ガスクロEPMAGS/MS尿素JIS K 2247一般廃棄物処理環整95号ごみ質分析危険物判定技報圧縮空気表面観察SEM硬さ古紙パルプ偽装はがき環境リサイクル新聞古紙JIS P 8120染色配合率におい成分コーヒー香り香料加熱脱着法気中の微量成分国際宇宙ステーションISS宇宙飛行士飲料水水パックヨウ素種子島宇宙センター宇宙ステーション補給機こうのとりHTVH2Bグリーン購入法信頼性確保PET特定調達物品森林認証材間伐材軟水硬水おいしい水硬度キレート滴定EDTA金属イオン誘導結合プラズマICP健康マイクロスコープ形態観察ハイダイナミックレンジHDR深度合成金属組織エッチング観察研磨琢磨ダイヤモンドフェノールエポキシアクリル低周波音騒音1Hz-100Hz物的影響周波数補正特性G特性SLOW特性動特性かおりガスクロマトグラフ悪臭物質大気リフラクトリーセラミックファイバーRCF作業環境測定労働安全衛生法総繊維数分散染色法位相差顕微鏡炭素硫黄CS計赤外線吸光法燃焼鉄鋼高周波炉管状炉非鉄金属セラミックFT-IR材質判定ゴム樹脂異物の判定構造解析非破壊微小物の分析マッピングイメージング元素分析元素組成窒素定量フリッツ プレーグルCHS計水素窒素組成式コークス類材料分析試料汚染定性分析試料採取微小試料XRDWDX特性X線波長分散分光法エネルギー分散分光法EDXFE電子銃エネルギー分解能熱分析TG-DTADSC酸化融解結晶化ガラス転移吸熱発熱前処理ボイド塗装プラスチック車両塗装顕微鏡SEM-EDX土壌汚染対策法改正土壌土壌汚染土壌汚染状況調査健康被害形質変更時届出区域土壌環境清浄度JIS B 8392清浄等級同体粒子パーティクルカウンター圧力露点オイルミストオイル蒸気微生物汚染物質イオンミリング前処理装置高倍率観察微小分析断面作製結晶コントラスト面分析油分分析ノルマルヘキサン油含有土壌TPH試験脱脂効果GC-FID四塩化炭素トリクロロトリフルオロエタンAESXPSSIMSTOF-SIMS電子線X線イオン定量分析硬さ試験ビッカースロックウェル鉛筆法モース静的硬さ圧痕動的硬さ引っかき硬さ有機分析炭化水素計法全有機体炭素計元素分析計法フーリエ変換赤外分光分析HPLCLC/MS塗料品密着性耐摩擦性JIS K 5600JIS S 6006揮発性有機化合物VOC希釈質量分析法JIS K 0125メスフラスコクロロエチレン揮散第4類引火性液体危険物確認試験特殊引火物第一から第四石油類引火点アルコール類危険物データベース登録安全データシートSDS表面分析水道器機浸出試験日本水道協会規格JWWA Z 108JIS S 3200-7亜鉛カドニウム六価クロムフェノール類環境大気吟醸香かおり風景100選HS-GC/MS悪臭防止法熱分解GC/MS排ガス空気分析TD-GC/MS有機化合物付着油分脱脂洗浄表面不良

CONTACT

生産・製造のトラブルでお困りの方、分析のご相談は
お気軽にお問い合わせください。

Pagetop