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前処理職人×鉄道趣味人

車両塗装層、湘南色時代、快速色事代、ブドウ色時代

 筆者はユニケミーに入社して28年、分析業務に携わる傍ら、休日に「蒲郡SLを守る会」の 一員として、蒲郡市博物館に展示されている蒸気機関車等の保存活動を行っています。博物館に展示されているのは「三次試作型」※1のD51 201※2で、JR西日本所有の動態保存されたD51 200※2の兄弟機です。ともに昭和48年頃まで中央線で活躍しました。 昭和48年に展示されましたが、その後昭和57年に、客車 「オハフ33 2424」※2、3も仲間に加わりました。40年以上に及ぶ継続した保存活動によって、海に隣接した地域にもかかわらず、現在も現役時の姿を留めています。

デゴイチ、D51、SL、蒸気機関車
※1「デゴイチ」の愛称で親しまれるD51型機関車の、量産前の最終試作型 (昭和13年10月製造 鉄道省 濱松工場)
※2「200」、「201」、「2424」は、車体の製造番号。D51は国内外でおおよそ1,115両、 オアフ33は606両製造され、他に改造による編入車が存在した。
※3「オハフ33」は、ブレーキの設備を備えた国鉄標準の一般普通客車。戦前から戦後 (1939年~1943年、1947年~1948年)にかけて製造された。

一方、本業の分析業務では、お客様のご要望と目的に合わせて日々多様な前処理を行います。業務は多くが製品や材料の評価を行う分析です。そして前処理は、その分析工程のうち最初に行わね ばならぬ試料の準備であり、サンプリングと同様 分析結果の良し悪しを決めてしまう極めて重要なステップです。お客様のご依頼のなかにある 「ボイド等の内在不良を観察したい」、「積層材料 の厚みを測定したい」といったご要望には、サンプルを樹脂に包埋し、数μmの精度で断面試料を作成します。  

 前処理は、前述のとおりその品質が以降の分析 に大きく影響する工程です。緻密さのない前処理 では誤った分析結果をもたらす危険があるため、 最大限の注意が必要となります。今回は、その前処理技術と副業の趣味を活かして作製した鉄道 車両の塗装片(断面試料/国鉄クモハ及び名鉄 モ:図1及び図2)をご紹介したいと思います。  

国鉄クモハ52004塗料片
 図1 国鉄クモハ52004※4塗料片
名鉄モ3738塗料片、名鉄スカーレット
図2 名鉄モ3738※5塗料片
※4 「クモハ 52004」は、運転台の設備を備えた電動車両。1978年頃まで使われた。現在は、 リニア・鉄道館(名古屋市港区)に、製造時の姿に復元のうえ展示されている。
※5 「モ 3738」は、吊り掛け駆動式(車輪が動いても、車軸とモーター軸の平行度や距離が常に一定となる構造)の通勤型車両。「3730系」は1964年から1996年頃まで活躍した。
※6 「スカーレット」は、通称「名鉄スカーレット」とも呼ばれ、名古屋鉄道の特急の一部を除くほぼ全車両に用いられている名鉄車両のイメージカラー。

 いずれの車両も、最初に塗装されてから約35年 から50年が経過しており、長期に亘って風雨にさ らされていたため劣化が著しく、前処理に細心の 注意を要しました。  

 昔の車両は鋼製で塗装が必要なため、鉄道車両 を新造した場合JRS66000-1(旧国鉄規格:車両塗 装方法)に基づいて塗装が行われます。しかし使 用年数が数十年と長いため、その間に幾度も塗装 の「塗り直し」が実施されます。「塗り直し」と言っ ても、前の塗装は一部を除いて剥離されないの で、塗料片の断面を観察するとその歴史が層状に なって現れます。小さな塗膜片に内包されたカラ フルな積層に、数十年に亘り幾多の人々を乗せて 駆け抜けた電車達の歴史の重みを筆者は感じま す。  

 今回車両の塗料片を取り上げましたが、実際に 当社で扱う試料は、プラスチック、金属、セラミッ ク等材質が多岐に渡ります。各種あるそれらの材 料は、特性が全く異なるため、適切な前処理に多く の知識と経験が必要になります。  この様にして得られた試料は、対象箇所の直接 分析が可能となり、顕微鏡等による観察のみなら ず、SEM-EDXやFT-IR等の機器分析にも用いられ ます。  

 ユニケミーは、モノづくりメーカーや企業のみ ならず、個人の方からも御依頼を受託しておりま す。趣味に係わる物や身の回りの気になる事な ど、お気軽にご相談下さい。理化学分析を用いる ことで、新たな発見や驚き、感動が得られるかもしれません。

Author 山口 勝Yamaguchi Masaru
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