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理化学分析の基礎知識 -飲料水編- 飲料水分析

飲料水の分析

(1)水道

 日本の水道の普及率は、2018年度末に98.0%に達しました。その水道は、定義が水道法にあり、その概要を表1に給水人口ほかとともに示します。

 表1にある上水道事業と簡易水道事業は、規模つまり給水人口の大きさに違いがあります。そして専用水道は、水道水を水源にした100m3を超える水槽を設けた自家用水道です。貯水槽水道も、同様ですが規模が小さく10m3を超え100m3以下の受水槽です。いずれも水道法が適用されます。一方それより小規模つまり受水槽が10m3以下の場合、小規模貯水槽水道と称し、水道法でなく自治体の条例による規制を受けます。

 なお給水人口が100人以下の小規模の水道施設及び旅館、ホテル、学校等の自家用水道そして個人の井戸もあります。それらは水道法などの法が適用されません。

(2)水道水及び飲料水の規制

 水道水は、水質基準が水道法第4条第2項に基づき水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号)に定められています。その水道水質基準のほか、表2のとおり水質管理目標設定項目及び要検討項目もあります。それら三つを参考1及び2、3に示しました。水道水は参考1の水質基準に適合しなくてはなりません。水質管理目標設定項目は、水道水から検出される可能性があるなどの、水質管理上留意すべき項目です。要検討項目は、毒性評価や浄水中の存在が不明などから水質基準及び水質管理目標設定項目に分類できない項目です。

 水道水のほかに水道水質基準が適用される水があります。旅館業法そして公衆浴場法に基づき水道水質基準を基本に水質基準を定めた通知があり、ホテルや旅館そして公衆浴場が使用する飲料水及び浴槽水の基準となっています。食品衛生法関連では、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)などがあり、飲食店で用いる水、使用水の基準を定めます。

 建築物における衛生的環境の確保に関する法律は、特定建築物で用いられる飲料水の水質基準及び給水設備の管理を規定しています。特定建築物は、同法第2条に定める環境衛生上特に維持管理の配慮が必要な、延べ面積3000m3を超える百貨店などの建築物です。同法施行令第2条第1項第2号は、水道水質基準を満たした水の供給を義務付けます。

 容量10m3未満の受水槽である小規模貯水槽水道は、条例等に規定がありますが、水質検査まで実施している施設が少ないとみられます。いずれにせよおいしい水を供給するため、管理を行い定期的な検査が必要でしょう。

(3)水質と循環資源

 普及率が100%近くと全国民に供給されると言ってよい現在、水道水に求められるのは質となっています。一時期生じていた琵琶湖のカビ臭などの問題も、排水規制や下水道の整備などそして高度浄水施設の整備により解消され、水質の改善が図られました。2014年度の水質基準順守状況が99.90%と、日本の水道の水質基準順守率は、アメリカやイギリスより高いとされています。

 一方2012年のヘキサメチレンテトラミンによる利根川汚染事件のような事故は、今後も起こり得ます。そのような有害物質による突発事故そして環境の変化に、浄水処理が対応しなければなりません。現在の浄水技術の中核は100年前の懸濁物質除去技術であり、前述の水質基準も長期の経験から定めた旧来の数値も多いとされます。循環する水の安全性及び環境保全から、今までと違い有機化学物質や農薬等を始めとする微量汚濁物質の浄化そしてその分析の技術と科学的な裏付けのある基準、更に循環による持続的な利用を進める技術などが求められていくでしょう。水道と環境は、別物でなく水源と水質を通して共通の基盤に乗っています。排水処理、下水処理、浄水処理はそれぞれ飲料水の水質に結びつきます。環境の保全と飲料水の安全は、水を一体の循環資源として法規制を含む管理を考えなければならない時代となりました。

(4)飲料水の分析(水質検査)

 水道法第4条は、水道水の要件を次の通り定めています。

①病原生物に汚染されていないこと

②シアン、水銀その他の有毒物質を含まないこと

③銅、鉄、弗素、フェノールその他の物質をその許容量をこえて含まないこと。

④異常な酸性又はアルカリ性を呈しないこと。

⑤異常な臭味がないこと

⑥無色透明の外観であること

 厚生労働省令にある付表1の水道水質基準は、それらの具体的な基準です。そして科学的知見を基に定められたWHOの飲料水水質ガイドラインとも整合しています。その基準を満足させるには、水道水源及び浄水場、送水配管、貯水槽そして水道の末端の管理が重要になるでしょう。そして安全な水道水を供給するため必要な水質検査は、水道の区分毎に表3そして参考5が定められ、定期的に参考4に示す方法を用いて検査が行われます。この場合水質検査の信頼性つまり水質検査の精度が重要になります。分析の精度管理は、GLP、ISO/IEC17025などにより実施されています。

参考1 水質基準

参考2 水質管理目標設定項目

参考3 要検討項目

参考4 水道水質基準項目と検査方法

参考5 水道と水質検査

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