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圧縮空気の清浄度測定
1.はじめに
圧縮空気は様々な業界に幅広く活用されている。自動車・自転車のタイヤ、電車バスのドアの開閉・ブレーキ等の日常生活の極めて身近な例を初めとして、工場の除塵用エアガンや医療現場なら歯科の歯を削るドリルを思い浮かべる方が多いと思う。
さらに、医療・製薬関連、食品等の衛生関連や半導体等の高度技術関連のような清浄度の高い圧縮空気を必要とする用途がある。弊社でもこれまで製薬業や食品関連業から測定依頼実績があり、件数も増えつつある。
今回は、圧縮空気の清浄度に関わる規格、その中に規定された試験方法を紹介したい。
2.圧縮空気の清浄度にかかわるJIS 規格
2000 年にJIS B 8392-1「一般用圧縮空気-第1 部:汚染空気と品質等級」が清浄度の表示方法として制定された。この規格はISO 8573-1:1991「Compressed air for general use-Part1:Contaminants and quality classes」に整合する規格である。しかし、基となった ISO 8573-1 は制定が1991 年であり、当時より半導体産業等が清浄度の高い圧縮空気を必要とするようになるなど、市場のニーズに対応できなくなった。
この時代の流れを受けて2001 年にISO 8573-1「Compressed air-Part1:Contaminants and purity classes」が発行された。これに伴い、JIS B 8392-1:2000 もJIS とISO 規格の整合化を図る方針に則り、2003 年にJIS B8392-1:2003「汚染物質及び清浄等級」と改正されさらにJIS B8392-1:2012 とされて現在に至っている。
規格は、圧縮空気中の主要な不純物として①固体粒子、②水、③オイルの 3 つを挙げている。この不純物の 3 要素がお互いに影響を及ぼし、圧縮空気システム配管内で凝縮し、付着・固化することも考えられるため、規格は実際の運転条件下の測定が望ましいとしている。
したがって、当該測定業務の実施に先立ち、次の確認が望ましい。
・圧縮空気の使用状況を確認し、サンプリング用装置等が適切に設置できること
・サンプリング等に使用する装置類が、測定対象圧縮空気の圧力、不純物の濃度範囲及び温度等に適合していること規格は数値表示の参照基準状態として表1 の条件を示す。
3.圧縮空気の清浄等級と測定方法
1)固体粒子
固体粒子の等級を表2 に示す。等級0 ~ 5 はJIS B 8392-4、等級6 及び7 はISO 8573-8(審議中)に従い測定する。
JIS B 8392-4 に従う測定では、圧縮空気中の濃度範囲と固体粒子径により適切な試験方法を選ばなければならない。その選択基準を表3 に示す。この中で最も多く用いられ弊社も採用しているレーザーパーティクルカウンター法は、適用粒子径が広く装置がコンパクトで現場の測定に適している。ただ、パーティクルカウンターは万能ではない。また0.1μmから5μm程度まで測定可能な装置は少なく、そして0.3μm 以上の領域に対応する装置が多数を占める。そのため、評価しなければならない粒径範囲と装置のそれが一致するか注意しなければならない。弊社の保有装置を写真1 に示す。
2)湿度と水分
湿度及び水分の等級を表4 に示す。圧力露点はJIS B 8392-3 に、水分は、ISO 8573-9(審議中)に従い測定する。
ISO 8573-9 に整合した規格としてJIS B 8392-9 が制定されている。
3)オイル
オイル等級を表 5 に示す。液状オイル及びオイルミストは、JIS B 8392-2 に従い求め、オイル蒸気は、ISO8573-5 に従い求める。オイルの総濃度はこれらの和になる。オイルミスト及び液状オイルは、メンブランフィルター等のサンプリング装置に圧縮空気を必要量通過させてオイルを捕集し、これを溶剤に溶解させ赤外線分光分析法から濃度を求める。
オイル蒸気は、活性炭を充填したステンレスチューブに圧縮空気を必要量通過させ、二硫化炭素抽出-ガスクロマトグラフ質量分析法により測定する。オイル蒸気は検知管を用いて簡易的に有無を確認する方法もある。
4)ガス状汚染物質、微生物汚染物質
ISO 8573 の一部として準備中のため、規格に清浄等級が規定されておらず、「可能であれば他の承認された規格を各種汚染物質の測定に用いることが望ましい」とされる。従って、使用者の目的や現状の性状を勘案し測定項目と基準値を設定する必要がある。
ガス状汚染物質は二通りの方法がある。一つはガスサンプリングバッグに圧縮空気を採取し、非分散形赤外線分析計(NDIR)等により一酸化炭素、二酸化炭素、窒素酸化物等を測定する機器分析法、他は検知管を用いて現場で簡易的に確認する検知管法である。
検知管法は手軽に測定ができて非常に便利であるが、試料ガスに含まれる妨害物質の影響を受けやすい点に注意する。
機器分析法は高価で大型の装置を必要とするが、低濃度の分析が可能である。弊社のような外部機関に分析を依頼していただき、第三者に対して測定結果を示す目的の場合多くはこの方法が採用される。また、どのような物質を含むか不明の場合、ガスクロマトグラフ質量分析計による定性分析を行い、含有物質の把握ができる。試料の採取方法次第でppb、pptオーダーの極めて微量な領域まで分析が可能なため、弊社にご相談いただけると幸いである。
微生物汚染物質の測定は、JIS B 8392-7 に図1 のスリットサンプラによる方法が示されている。
弊社はアメリカSKC 社製のバイオステージ(写真3 参照)を用いる。内部に90~100mm のシャーレが設置可能で、慣性衝突法により圧縮空気を平板培地に直接捕集する。培地は、真菌類対象がポテト・デキストロース寒天培地、一般細菌対象がトリプトソーヤ寒天培地を使用する。
4.おわりに
JIS B 8392-1 にまだ清浄等級の示されていない汚染物質があり、またISO の規格整備が進まず測定方法が明確でない物質もあるため、将来さらに評価の必要な測定項目の増加が予想される。
また、従来弊社が対応してきた項目についても、さらに高い清浄度を求めるご要望をいただくことも考えられる。今後さらに幅広い圧縮空気測定に対応できるよう測定方法等技術的知見の蓄積に努めていきたい。
参考文献
1.JIS B 8392-1:2012 圧縮空気-第1 部:汚染物質及び清浄等級
2.JIS B 8392-2:2011 一般用圧縮空気-第2 部:オイルミストの試験方法
3.JIS B 8392-3:2001 空気圧-第3 部:湿度測定方法
4.JIS B 8392-4:2003 圧縮空気-第4 部:固体粒子含有量の試験方法
5.JIS B 8392-5:2005 圧縮空気-第5 部:オイル蒸気及び有機溶剤含有量の試験方法
6.JIS B 8392-6:2006 圧縮空気-第6 部:ガス状汚染物質含有量の試験方法
7.JIS B 8392-7:2008 圧縮空気-第7 部:微生物汚染物質含有量の試験方法
8.JIS B 8392-8:2008 圧縮空気-第8 部:質量濃度による固体粒子含有量の試験方法
9.JIS B 8392-9:2008 圧縮空気-第9 部:質量濃度による水分含有量の試験方法
10.( 社) 日本機械学会:“湿度・水分測定と環境のモニタ” p115-119 (1992) 技報堂出版
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貴社では出張して現在使用中の圧縮空気が実際の品質等級1.6.1になっているかを測定頂く事は可能でしょうか。