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波の真実 ⑵ 位相について -なぜイヤホンはノイズキャンセルできるのか?-

「位相」は、主に振動や音などの波動で用いられる用語になります。インターネットで検索すると、こう説明されています。
位相(いそう、英語: phase)とは、繰り返される現象の一周期のうち、ある特定の局面のことであり、波動などの周期的な現象において、ひとつの周期中の位置を示す無次元量でもある。(Wikipediaから抜粋)
・・・・・・・・・・。
言葉で気持ちを伝えることの難しさを実感します。位相の分かっている人が読むなら「確かにその通り!」と思える端的かつ適切に表現されています。果たして、位相の分からない人に伝わるのだろうか?
「位相」の前に三角関数を復習します。

半径1の円周上にある点の座標を x,y とします。
その点から中心に線を引き、x軸との間にできる角をθ(シータ)とします。
このとき、
x=cosθ
y=sinθ
が成り立ち、cosθとsinθを三角関数と呼びます。
θの単位はrad(ラジアン)です。
radは弧の長さを半径で割った無次元量です。
つまり、180°はπrad、360°は2πradになります。
小学校で習った円周=直径×円周率は計算式ではなく、実はradの定義だったのです。
丸いのに三角関数と呼ぶのは、もともと直角三角形の斜辺と底辺または高さの関係を示す関数だったためです。
横軸をθ、縦軸をyとして、y=sinθを描くと三角関数のグラフが出来上がります。

二つの青点は一つの周期内で同じ位置にあるため、同一の位相となります。

円で言うと、グルグル回る1周目と2週目の同じ位置になります。
振幅が異なる場合

周期が異なる場合

いずれの青点も同一の局面にあるため、上記の7つは全て同じ位相を示します。これ踏まえると、下記の説明文が理解できるのではないでしょうか。
位相(いそう、英語: phase)とは、繰り返される現象の一周期のうち、ある特定の局面のことであり、波動などの周期的な現象において、ひとつの周期中の位置を示す無次元量でもある。
最近の液晶テレビは大型化し、二つのスピーカーが離れて付いています。薄型テレビではスピーカーコーンが小さく音質の悪るい機種もあり、スピーカーを増設した人もいることでしょう。テレビを見る時に、座る位置によって音質が変化すると感じる人もいると思います。

聞く位置によって音質が変わるのは左右に届く音の位相がズレるためです。位相のズレを敢えて利用して立体感を演出するのがステレオサウンド、音場を変えるのがエコライザーになります。

ピアノやバイオリンなどでも箱の中で反射してから出てくる音は弦と位相がズレます。「いい音」と言われる名器は、この位相差に由来するのだと想像します。
もう一つ、位相のズレを巧みに利用した例として、ノイズキャンセル機能が挙げられます。電車のモーター音や自動車のロードノイズなどの定常波は、イヤホンで消すことができます。ノイズの振幅をプラス・マイナス逆にするか、位相を1/2ズラした音をイヤホンが発することで打ち消すことが出来るためです。


X線回折(XRD)という分析装置があります。これも、位相のズレを利用した装置になります。
ある角度θで結晶へX線を照射すると、1つ目の格子での反射と2つ目の格子での反射※が生じます。2つ目の反射光は格子の幅に応じた分だけ光路長が異なるため位相がズレます。θによってズレ具合が変化し、検出器に到達するX線の強度も変化します。光路長の差が波長の整数倍のとき、同位相になるため最大値を示します。最大値を示すθが結晶の種類によって異なるため、化合物を特定する情報を得ることが出来ます。
※厳密には、回り込むため回折と言う方が正しい。

位相がズレないθ
検出器に入るX線が最大

位相が1/2波長ズレるθ
検出器に入るX線が無し

身近なところでは、シャボン玉の虹色も同じ原理です。
ジャボン膜の外側と内側で反射した光が干渉します。膜の厚さが均一でないため、虹色に見えます。凸レンズでも同じく、虹色になる現象が見られます。レンズの厚さに合わせた間隔で環状に干渉縞が現れます。
万有引力で有名なニュートンが発見したため、ニュートンリングと呼ばれます。



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