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画像解析法による粒子解析の紹介

1.はじめに

自動車のEV シフトや自動運転化、医療や建築など適用分野が広がるロボット技術、ウェアラブルデバイスの急速な普及など、技術の進歩には目を見張るものがある。それに伴い、高性能な最終製品を構成する様々な部品への品質要求も高くなっている。例えば、部品の生産又は処理後に残る異物や残さなどによる汚染は、集積回路のように製品の性能や安全性に影響を与えるため、品質の要求項目の一つになる。特に、部品に付着する微細な粒子の管理基準は、欠陥や故障につながるため厳格である。そこで自動車業界では、部品の清浄度管理の規格であるドイツ自動車工業会(VDA)のVDA19 や、国際規格のISO16232「Road Vehicles — Cleanliness of components of fluid circuits 」などを管理基準に利用する。


部品の清浄度の評価は、付着粒子のサイズや形状、粒度分布、性状、成分の調査が必要である。また、それらの結果から粒子が付着する工程を推測し工程改善も可能となるため、部品製造の品質管理に付着粒子の調査が必須と言える。

本稿では、付着粒子の調査手法として、当社が主に用いる「画像解析法」について紹介する。

2.粒子解析法の例

粒子解析は、目的に合わせて様々な手法がある。代表的な方法を以下に記す。

ふるい法:目開きの異なる複数のふるいを振動させて粒子を大きさにより分類し、粒径毎に秤量して、粒度分布を得る方法。数10μm 以上の粒子サイズが大きく、試料量の多い乾燥状態の粉体試料に用いられる。(写真1)

粒度分布計法:レーザー照射による散乱パターンを解析し、粒度分布を得る方法。当社では、おおよそ0.02μm から2 mm までの大きさの微細粒子を対象に用いられる。(写真2)

画像解析法:マイクロスコープや顕微鏡で撮影し、その画像を解析する方法。使用する機器により、粒度分布の他前述の二つの方法にない粒子の成分情報も得られる。(写真3)

次項より、画像解析法について事例を挙げて詳細に紹介する。

写真1 ふるい
写真2 湿式粒度分析計
(レーザー回折散乱装置)
写真3 電子顕微鏡

3.画像解析法

当社では、「コンタミ解析法」「視野法」「パーティクルファインダー法」の3 種の画像解析法を粒子の評価方法として提案している。いずれの方法も、フィルター上に分散させた粒子を解析対象とする。部品に付着する粒子を解析する場合、超音波洗浄などにより表面の付着粒子を捕集し、その捕集液をろ過したフィルターを供試する。多くの種類がフィルターにあるが、当社はポリカーボネート製メンブレンフィルターと銀製フィルターを使う。

3. 1 コンタミ解析法

3. 1. 1 概要

「コンタミ解析法」は、デジタルマイクロスコープによる自動解析である。デジタルマイクロスコープは光学系とデジタルカメラを搭載した、試料を拡大観察・撮影する機器である。任意の倍率で指定範囲を撮影し、調光条件等を設定して取得画像の二値化処理により粒子解析を行う。粒子の形状、サイズや面積、大きさの分布などの情報が得られる。なお、デジタルマイクロスコープは光学撮影画像で解析するため、無色透明やフィルターと同系色の繊維・粒子の解析が難しいのが短所である。

3. 1. 2 解析事例

製品外観不良の原因の一つとなる室内浮遊粒子の解析を模して、当社居室内の浮遊粒子を分析した。

居室内に静置したシャーレに浮遊粒子を採取し、そのシャーレを洗浄してメンブレンフィルター上に回収し、コンタミ解析法を利用し解析した。

図1 に80 倍のマクロ観察写真、図2 に粒子解析結果を示す。浮遊粒子は、衣類が発生源と考えられる長さ1mm を超える繊維や、10 μm から40 μm 程度の微細な粒状物が多く確認できた。

図1 マクロ観察写真
図2 コンタミ解析による粒子解析結果

3. 2 視野法


3. 2. 1 概要

「視野法」とは当社の呼称で、二次電子像による直接測定を指す。二次電子像は走査電子顕微鏡(SEM)観察で得られる画像の一つで、主に試料の表面形状の情報が得られる(図3)。任意の倍率で複数視野撮影した二次電子像を利用して、粒子個々の測長と元素分析を手動で行う。粒子のサイズや形状、大きさの分布、性状又は成分などがわかる。

撮影した画像の総面積を試料全体の面積(ろ紙捕集した試料の場合ろ過面積)に換算して、試料全体の粒子解析結果とする。

3. 2. 2 解析事例

研削加工で発生する粒子を模して、金属を研削した粒子を調査した。コンタミ解析法と同様にフィルター上に捕集し、SEM 観察とエネルギー分散形X 線分光器(EDS)を用い解析した。解析結果を図4 に示す。粒子の成分は炭化ケイ素(SiC)と鉄(Fe)であり、それぞれの粒度分布も得られた。

あくまで一部の視野の解析情報となるが、視野数を多くとれば代表性状が得られる。また、二次電子像が撮影できれば解析可能なため、後述するP.F. 法によるEDS が分析対象外とする炭素(C)や窒素(N)等の元素を含む幅広い解析が可能となる。

図3 SEM 画像(二次電子像)
図4 視野法による粒子解析結果

3. 3 パーティクルファインダー法(P.F. 法)

3. 3. 1 概要

「パーティクルファインダー法(以下「P.F. 法」という)」は、反射電子組成像による自動解析法である。反射電子組成像もSEM 観察の画像の一つで、主に試料の組成に関する情報が得られる(図5)。P.F. 法は反射電子組成像を用いて、素地(今回はフィルター)と粒子の明度の違い(組成の違い)により画像解析を行う。任意の倍率で指定範囲を自動撮影し、画像の二値化処理で抽出した粒子を全てEDS で元素分析する。粒子のサイズや面積だけでなく、各粒子の成分情報も得られる。なおP.F. 法は、二値化処理する反射電子組成像が組成の差からコントラストの差を作るため、フィルターと成分が近い粒子の検出が困難である。

3. 3. 2 解析事例

様々な粒子を混ぜた模擬試料を作製し、メンブレンフィルター上に回収してP.F. 法で解析を行った。解析結果を図6 に示す。元素分析結果から、粒子それぞれを最大含有量の元素として分類し解析した。鉄(Fe)の粒子が最も多く、他にケイ素(Si)など多種の元素が認められる。模擬試料は2 μm から4 μm 程度のごく微細な粒子が多くを占める。粒度分布は、図6 に示した粒子の大きさによるほか、元素の種類ごとの解析も可能である。

図5 SEM 画像(反射電子組成像)
図6  P.F. 法による粒子解析結果

3. 4 粒子解析法のまとめ

それぞれの適用範囲を表1 に示す。粒子サイズが大きく低倍率で観察可能な場合コンタミ解析法、粒子サイズが小さくアルミニウム(Al)やケイ素(Si)より原子量の大きな元素を対象とする場合P.F. 法、その他の場合視野法を評価方法として提案している。

表1 各粒子解析法のまとめ

4.おわりに

画像解析法による粒子解析について紹介した。部品付着粒子や工程液中の残留粒子の量をあらかじめ測定すると、不具合発生率の低減も期待できる。今回紹介した方法は組み合わせも可能である。またデータ解析のパラメータを複数検討し、分布傾向の多角的な確認も可能である。一つの事案に複数の視点から方法をご提案できる当社の柔軟な分析サービスをお使いいただき、モノづくりにおける問題解決の一助となれば幸いである。

参考文献

1) 粉体工学会編. 粒子径計測技術. 日刊工業新聞社,1994,309p.
2) 古川和樹, 加藤茂, 岡辺拓巳, 竹内麻衣子. 画像解析を用いた粒度分布推定手法の構築. 土木学会論文集B2( 海岸工学).2017,73(2),p.I_1645-I_1650.
3) 山田満彦, 小笠原光雄, 近藤芳生. 電子顕微鏡とその画像処理の実際. 日本画像学会誌.2003,42(2),p.146-153.

Author 彦坂 諒一Ryoichi Hikosaka
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